1.北東アジアを威嚇した潜在的な戦場、韓半島に吹く平和の風
1)2017年 朝鮮半島情勢:戦争の危機の高まり
私は2017年の全交大会で、朝鮮半島の戦争危機について話しました。当時、朝鮮半島は戦争の危機が高まっていました。北朝鮮がミサイルと核実験を繰り返し、それに対応するという名分で、星州サード配置など米国の戦略兵器が朝鮮半島に配置され、日米韓軍事同盟が強化される動きが慌しかった2017年は、トランプの「炎と怒り」が現実になるかもしれないという危機感が広がっていました。これらの戦争危機の情勢の中で、韓国では、北朝鮮の核実験中止とアメリカの戦争危機助長に反対し、平和のための市民の闘争が広がりました。この時サード反対住民の激しい闘争が大きな力になりました。また、北朝鮮の非核化だけでなく、韓国の脱核(脱原発)と北朝鮮の非核化を同時に要求する、朝鮮半島の非核化と戦争反対を主張する闘争もありました。これらの韓国の戦争危機情勢と平和運動を紹介し全交大会参加者の皆様と共感を交わしたことを覚えています。その結果、朝鮮半島の非核化と東アジアの平和のための日韓市民共同行動を決意して、韓国と日本で1000人余の市民と団体の共同声明を組織し発表しました。
2)2018年 朝鮮半島情勢:4.27南北首脳会談、6.12米朝首脳会談開催!
2018年、私たちは、世界の歴史に残る特別な場面を目撃しました。 「炎と怒り」というお互いに向けられた極端な敵対を隠し、対立の象徴だった板門店と中立地域シンガポールで、平和を開く同志のように手を握る光景が次々と演出され、世界の人々の注目を集めました。これによりすぐに軍事的対立と緊張の冷戦時代を終わらせ、東アジアの平和が成し遂げられるという期待が高まりました。悪の枢軸・隠遁国などと呼ばれた北朝鮮が「完全な非核化」を約束して体制を保障され、やがて正常な国家として国際社会に登場するのだという期待を生み出しています。このような政治的な状況は、多くの経済効果も生み出しました。
3)南北首脳会談、米朝首脳会談宣言文の内容と各界の反応
4.27南北首脳会談に続き、612米朝首脳会談宣言文で確認できていることを大きく要約すると、次の3つになります。
第一に、南・北間、米・朝間の関係改善(敵対的関係を終息し交流交易)
第二に、軍事的対決の緩和、威嚇的な軍備の縮小
第三に、朝鮮半島の平和体制の構築(平和協定または終戦宣言)
(※北米会談:朝鮮戦争当時の米軍の遺骸送還追加)
これらの交渉の結果について、韓国の保守とアメリカのマスコミは、北朝鮮の核問題についてCVIDを明示していない失敗した会談であると評価し、会談前の冷戦状況に回帰する可能性を煽ることもしています。しかし、北朝鮮の金正恩や米国のトランプが会談前に戻ることはないとの見方が多数です。なぜなら、朝鮮半島の平和体制を構築することが、北朝鮮と米国の国内政治において自分たちの政治支配を守るのに有利な状況だと見ているからです。
韓国は、首脳会談後、国民の82.4%が首脳会談に満足していると応答し、文在寅大統領の支持率が80%に達しました。これらの支持率は、分断により経なければならなかった桎梏の歴史を終わらせたい既成世代と、南北関係の改善を通して韓国の政治・経済的問題を解決するための突破口を作ることができるだろうという若年層の現実的な期待が、交じり合って現れた現象だと見ることができます。
4)南北首脳会談・米朝首脳会談への期待が作り出した6.13地方選挙での民主党圧勝
6.12シンガポール米朝首脳会談の翌日の6月13日、韓国では地方選挙がありました。選挙結果は、まさに革命的と言えるほど、民主党圧勝で終わりました。保守の家庭菜園と言われる韓国の嶺南地域である釜山、蔚山、慶南でさえ、基礎議員まで「民主党」が席巻しました。「誰であれ民主党の党籍だけ持てば(民主党所属であれば)当選する」という言葉が選挙戦で出回ったところ、実際にそうなりました。本当に強い風が吹きました。このような現象は、韓国国民が持っている朝鮮半島の平和体制構築への期待がどれほどまでに高いかを示すものです。ところで、保守政党の自由韓国党の指導部が南北首脳会談に反対と卑下を一貫し、国民情緒をきちんと読まず、さらには党内部でさえも支持されず、分裂の様相を明らかにし、その結果、地方選挙に惨敗しました。
5)米朝首脳会談以降、平和の風が停滞、薄氷のような情勢を溶かすことができるのは、民衆の闘争!
612米朝首脳会談以降、非核化と終戦宣言に対する期待が一層高まりましたが、会談後1ヶ月が過ぎても高官級実務協議で後継措置の合意が導き出されていません。これをもって一部では、協議は失敗し米国が北朝鮮との会談を継続しているのは国際外交関係において名分を構築するのに過ぎないと評価したり、最近北朝鮮がポンペオ氏との会談に対する反応を発表し、米国の非核化要求について「強盗のような要求」という表現で書き表すなど、関係の緊張を顕にしています。ここには、中国と米国というG2の覇権競争が介入しています。中国は朝鮮半島の終戦宣言で政治・外交地位を確保して以来、朝鮮半島情勢を統制する影響力を高めるために、北朝鮮の体制保障と経済支援を確認させながら北・中間の同盟関係を強化しようとしています。これに対して北朝鮮は、自国の利益のために中国のこのような意図を活用し歩みを共にしています。 これに対してトランプは、世界でアメリカの覇権を掌握するため、北・中間の癒着について露骨に不快感を表わし、対中国貿易で関税爆弾を付加するなど、中国への経済制裁攻撃を強めています。したがって、朝鮮半島の平和体制の構築が現実化されるにはまだ越えなければならない課題がたくさんあります。
朝鮮半島に真の平和体制を構築するためには、米国と中国の覇権争いに振り回されず、南北の関係改善と、交流、そして、基本協定を結ぶなど、南北政府の自主的な決断が必要です。ところで、韓国と北朝鮮政府の決断を実現させるためには、韓国の民衆が下から朝鮮半島平和体制への要求をより強力に促さなければなりません。これに続いて、現在の韓国では、平和を願う市民のキャンドル行動が続けられています。併せて、日本をはじめとする東アジアの民衆においても、韓半島の平和体制実現のための要求と連帯闘争が必要です。
2.朝鮮半島の平和の時代を切り開いているのは一人の政治家ではなく、長い年月、平和のために戦ってきた民衆の闘争である。
韓国は第2次世界大戦終戦後、分断、韓国戦争、そして停戦65年を経る間、戦争の恐怖を利用して政権を維持した人々によって民主主義と平和が奪われてきました。李承晩、朴正煕、全斗煥、盧泰愚は、朴槿恵、李明博につながった韓国の保守政権は極端な反共イデオロギーを掲げ、民間人虐殺と数多くのスパイ操作事件を作って殺したり、刑務所に監禁し、労働者民衆の政治経済的民主主義闘争を「敵(北朝鮮)を利する行為」と規定し、極端な弾圧をしました。韓国の国家保安法は、このような弾圧の根拠となり、この法律は、韓国の代表的な悪法としてまだ存在しています。このように、分断は韓国民衆の生活に多大なトラウマと痛みを持続させた主犯であり、韓国の民衆は、そのような痛みと向き合い闘いながら、平和というものが民主主義を勝ち取るための非常に重要な課題であり、また、民主主義を正しく実現しなければ平和を守る力をもつことができないということも分かりました。 2018年、韓半島に吹く平和の風は、まさにこのような韓国の民衆の絶え間ない民主主義闘争の結果です。
4.19民主抗争、釜馬抗争、5.18光州民衆抗争、87年6月抗争、789労働者大闘争、以来多くの労働者の生存権闘争と労働法改正、構造調整粉砕闘争、米軍装甲車により犠牲となったミスンさん・ヒョスンさんの追悼キャンドル集会、大秋里米軍部隊反対闘争、狂牛病ろうそく集会、セウォル号真相究明闘争、江汀(カンジョン)海軍基地反対闘争、密陽(ミリャン)送電塔の建設反対闘争、済州第2空港建設反対闘争、原子力発電所反対闘争など分断70年の間に韓国民衆の闘争は一日も休む暇がなく、時折命をかけなければなりませんでした。これらの民主主義闘争の経験が凝縮され、朴槿恵退陣キャンドル行動が巨大な波になり、腐敗した政権を引きずりおろし、新しい政権に交代させる力となりました。そして、政権交代後、韓半島の平和を具体的に脅した北朝鮮と米国の戦争危機の高まる雰囲気に対して、平和共存を促す平和キャンドル行動などを続けてきました。その最後に南北首脳会談がありました。そして、米朝首脳会談がありました。そして、南北首脳会談と米朝首脳会談以後、朝鮮半島の平和共存を具体的に実現するために、文在寅政府の平和政策に力を加えるための民衆の熱望が、地方選挙での民主党圧勝という結果を作りだしました。
3.まだ残された課題
1)排除と嫌悪を超え、平和共存の文化を日常から!
平和は、民主主義と常に一緒に行動します。いくつか残った困難な問題を解決し、米朝首脳会談の後継措置の合意が導き出され、停戦協定を破棄して終戦を宣言し、平和協定を完了して、韓半島の軍事的対決の様相が消えるといって、平和が自然に維持されることはないでしょう。軍事的対決が消えた場所には、経済的対決が戦争を彷彿とさせる緊張を高めることになり、これにより、民衆の生活はグローバルな資本によってさらに疲弊してゆくでしよう。
韓国ではこのように言います。 「アカが消えた場所に性的少数者、女性、移住民、身体障害者などを置いて、排除と嫌悪の政治を続けるだろう。さらに恐ろしいのは、これが国家主導ではなく、大衆自らが排除と嫌悪を選択することである」。韓国はこれまでよりも「排除と嫌悪の発話」の言説が高まっています。軍事的冷戦時代が終結しても、新しい「敵対の文化」が登場するかもしれません。グローバル資本と世界を支配する権力が、これらの大衆の憎悪の文化を煽り、自分たちの優位性を維持強化しようとするならば、私たちは別の「反 平和」と闘わなければなりません。したがって、軍事的平和を越えて日常的な生活の平和を守るための文化闘争が必要です。
2)文化闘争の拠点づくり
代案文化連帯は、政治権力を変え制度を変える闘争だけではなく、民衆自らの生活の文化を変えるヘゲモニー闘争が重要であると考え、文化運動を継続しています。メディアと教育、文化芸術が文化を形成する3つの軸だと思います。したがって、このような運動の拠点を作るために暁露(ヒョウロウ)インディーアートホール建設のために拍車をかけています。暁露インディーアートホールには、東アジアの平和運動の拠点となる「記憶の部屋」を作り、戦争の歴史とジェノサイドと平和運動を記録する予定です。お金のない民衆の力で民衆運動の拠点空間を作り出すことは難しいことですが、数年にわたる努力の末、土地(釜山市蓮堤区內)を買いました。建物を建てる資金をさらに集めるために努力しています。日本の全交の同志の皆様に募金で協力していただきました。ありがとうございました。暁露インディーアートホールに作られる「記憶の部屋」が東アジアの平和運動の拠点になることができるよう、日韓民衆が共にすることを願います。
3)次世代の韓日連帯、国際連帯のための種子まき
全交(ZENKO)との縁は、劇団セビョク(夜明け) – 労働者民衆会議 – 対案文化連帯と続きながら、グローバル資本に対抗する民衆の国際連帯を強化してきました。世界は単一の市場経済第秩序で囲まれており、したがって、1国だけの革命が不可能な時代と言われています。したがって、国際連帯は、いくら強調してもしすぎることはありません。
全交と代案文化連帯の古い連帯は今、次の世代に受け継がれ、新しい時代の矛盾に共に対応する力を育てなければなりません。 2018年5月に韓国の平和行動に参加した全交の青年たちと韓国の青年たちの出会いは、それ自体が希望でした。この流れを続けて、平和のための具体的な連帯のために、東アジアと世界の歴史認識と平和感受性を共有するために、2019年1月初めに「平和をめざす日韓青年平和行動in沖縄」を開催したいと思います。この出会いが、今後数十年の間につながる韓民衆連帯の大切な種になると信じ、農業をする心で準備しようと思います。全交の青年たちの多くの参加をお願い致します。韓国青年の参加を促します。