コロナ危機下で命と生活を守る6.11ZENKO中央要請行動報告─市民の思いを伝え政策転換を

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通常国会会期末を控えた6月11日(金)に中央要請行動を実施しました。計7府省庁に対し、現場の声を直接届け、コロナ禍で危機にさらされる命と生活を守るための政策転換を強く求めました。

スタート集会

参加者は参院議員会館前でのスタート集会を行いました。この日は、改憲手続き法が強行され、それに対する緊急抗議行動(総がかり行動実行委員会など主催)が行われ、ZENKOも合流しました。

防衛省(辺野古新基地建設)

辺野古新基地建設、戦争政策をやめ軍事費削減を求める交渉は、スピーキングツアーなどで学んだ基地の実態や闘いを踏まえ、防衛省を追及する場だ。

担当官たちは、圧倒的多数の県民が反対し続ける新基地建設について「普天間飛行場の危険性の除去のための唯一の解決策」と官僚答弁を繰り返した。しかし、ツアー沖縄集会で具志堅隆松さんが訴えた基地埋め立てに沖縄戦犠牲者の遺骨の混じった南部土砂を投入する問題では、「変更承認後の土砂の調達先は決まっていない」とごまかしに終始したものの、「大変重要な問題であると考えている。しっかりと検討していく」と言わざるを得ない。

大浦湾軟弱地盤問題で「工事施行可能。実績がある」との回答に、「90mもの深度で地盤改良をやった実例を示せ」と求めると、担当者は「関西空港」「羽田空港沖」と浅い海底の工事しか示せず、「資料がないので」と返答に窮し逃げるように退席した。

宮古島で民家のすぐそばに建設された自衛隊弾薬庫もただした。「200mしか離れていない住民が、弾薬庫が爆発したらどうやって逃げるのか。避難計画を作成しているのか」の質問には、「火災が発生しないよう」と述べるだけ。避難計画の存否も答えなかった。

参院で緊迫する重要土地規制法案を追及。「集会、座り込みそのものは機能阻害の対象でない」と言いつつも、阻害行為であるかは誰が決めるのか、には「内閣総理大臣だ」とし、具体例も類型も一切明らかにせず。権力者の都合でいくらでも市民を弾圧できる本性を露わにしたことを厳しくただし、防衛官僚たちを追い詰める行動となった。

(ZENKO事務局・森文洋)

厚生労働省①(コロナ解雇・労働政策)

雇用・労働問題の厚労省要請は、立憲民主党の石橋通宏(参院)、西村智奈美(衆院)両議員事務所の協力を得て実現した。

厚労省側は労働基準局や職業安定局の11人が出席。要請参加者を驚かせたのは、労働者保護を所掌事務としているはずの厚労省担当者から“経営者側の事情にも配慮すべき”とする回答が連発されたことだ。

コロナ禍の解雇禁止措置の要求は「労働契約は契約自由が原則。事業主の経済活動に影響が大きいなどの課題がある」と拒否。休業手当の算定方法を“平均賃金の6割”から“実際支払われていた額の8割”に改善せよとの要求にも「企業も厳しい経営下にある。会社としての存続が危ぶまれるケースも。制度見直しは労働者と企業の両方の状況を踏まえ、慎重な検討が必要」と応じない。

雇い止めが横行し、労働局に申告しても“情報提供”としか扱われない実態をつきつけると、「そういうことがないよう周知していきたい」「貴重なご意見を共有し、現場でどう運用しているか確認し、対応する」。休業支援金については「事業主の協力がない場合も、労働条件通知書などの証拠があれば対EUのような一律の規制ができるか、諸外国の状況をしっかり調査する」と答弁したのを受け、制度を研究し対応を検討するとした。

資源エネルギー庁(汚染水)

資源エネルギー庁に対しては、福島第一原発の汚染水海洋放出方針撤回を求めた。漁業関係団体の反対表明、周辺自治体の反対・慎重決議は無視できず、「放出まで2年はあるので、理解を求める努力をしていく」とは答えたものの、国の言う努力と理解は、ゼロベースからの立場ではなく、あくまで放出を実施するためのアリバイ作りでしかないことが明らかになった。

国の説得とは、タンクが廃炉作業に支障をきたす、「風評被害対策」として損害賠償金を検討する、という内容だ。担当者は「放出の前に基準以下にするのが役目」としか言わない。 今後、エネ庁による漁協や自治体への「説明」の際、実害と保管の対案を議題にさせていく必要性が浮き彫りとなった。

原子力規制庁(老朽原発・安全審査)

原子力規制庁原子力規制部には、40年超えの老朽原発廃炉を求めた。ZENKO関電前プロジェクトは、昨年12月の大阪地裁判決を活用し、「1000ガル以上の地震が20年間で17回起きている。原発に高い耐震性はない」と不安を訴えた。避難計画もないままの再稼働について、「避難対策は重要。実効性のない避難計画で原発動かすな、という主張はわかるので、上部に伝えます」と答えた。

政府のCO2削減、火力発電から原発再稼働への方針の下では、再生可能エネルギー転換方針、30年までの構成比目標5割以上(政府は30%)など、脱原発・再エネ転換の議論と合わせて行う必要性が増してきた。

財務省(避難者住宅)

財務省には昨年11月4日に続き、国家公務員宿舎に住む区域外避難者の住宅追い出しについて中止するよう要請した。行き場のない避難者の実態、人権侵害に当たる福島県の実家訪問、住宅確保に向けた福島県の対応などについて約1時間、意見交換を行った。

通知・提訴の意向はない

県の4世帯明け渡し提訴については、現在のところ所有者の財務省として、4世帯を含む避難者への明け渡しの通知や提訴を行う意向がないことを明らかにした。参加した避難当事者は「家主が出ろと訴えていないのに、関係のない福島県が出ろというのは裁判でも問題にしていく」と語った。

2019年3月の国家公務員宿舎継続入居(有償)契約解除の際、「事情のある世帯」の取り扱いは県と国で協議されることとなっていたが、生活保護受給世帯だけで、他の経済的困窮者・精神疾患で定職につけない者らは外された。国が「(県は)きめ細かく把握してきたと承知しています」といった認識のため、その誤りを指摘すると「福島県が、生活保護だけを“事情のある世帯”として挙げた」という事実を明らかにした。事情のある世帯の調査について当時、国は独自にやらずに福島県任せにしてきた。今後、継続入居希望者の声が反映される場を持つよう要望し、「検討する」との答えが返ってきていた。

福島県は昨年、退去と明け渡し提訴を示唆する通知文を避難者に送り付け、実家を勝手に調べて訪問し親族に退去と損害賠償金支払いへの協力を催促して回った。「このような人権侵害を見逃すのか」と訴えたところ、財務省は、通知発送の事実は県からの事後報告で、実家訪問の事実はニュース等メディアで知ったことを明らかにした。当事者の手紙によると県は「損害賠償金がたまっている。払ってくれないと私たちが給料をもらえない」「引っ越さないのはわがままだ」「月7万円くらいで借りられるだろう」などと脅している。財務省は「今日話されたことに関して、福島県に調査してみる」と返事した。

住宅の確保では、国は「福島県は住まいの確保等に適切に対応している」と評価しているため、その誤りを指摘。福島県が紹介するのは、入居条件が困難、民間家賃相場同様の物件ばかりで、役には立っていない。「避難者の住宅追い出しを許さない会」代表で自らも避難者の熊本美彌子さんは「県が紹介した物件を見に行くとゴミ屋敷だった。低額家賃なら支払う意思はあるが単身者は都営住宅への入居資格がない、応募しても当選しない。避難者向けの公的住宅を確保してもらいたい」と訴えた。

最後に、「今日の話を受け県に聞いてみる。その後の対応は、すべてに応えられないかもしれないが、報告はする」と約束した。

文部科学省①(奨学金)

文科省には、保証人の支払い義務を超える返済金の返還を命じた札幌地裁判決(5/13)を踏まえ、貸与型奨学金の「人的保証」から「機関保証」への移行、給付型を根幹とする抜本的な制度変更を求めた。

機関保証については「将来的に視野に入れつつも慎重に検討」、給付型奨学金については「貸与型の拡充で進学の機会が開かれていること、進学せずに働く者との公平性にも留意する必要があることを十分に踏まえなくてはならない」と消極的姿勢に終始した。

厚生労働省②(新型コロナ検査・医療拡充)

新型コロナ感染をめぐっては厚労省の担当官僚15人が対応。ZENKOの代表7人が「国民の命と健康をまもるために検査と医療体制の抜本的な拡充」を請願し、無症状者を重点に大規模な社会的検査を国の責任で行うことを訴えた。

「国のまん延防止対策は感染拡大防止。クラスター対策が中心」との回答に、感染抑制ためにはクラスター対策では追いつかない、今後も無症状者にPCR検査を拡大する予定はないのか、と再度ただすと、「予定はない。私は聞いていない」と断言は避けるものの行う様子はない。

国がやらないなら民間検査を行った場合の費用を国が全額負担を、との要請には、「国庫からの支出は行政検査のみ」と開き直る。

自治体によっては介護・高齢者施設等でも検査が十分に行われていない。地域によって格差が生じている現状を放置するのかと、大阪・枚方市や、オンラインで兵庫・西宮市など検査が進んでいない現場の実情を訴えた。「高齢者施設への検査計画作成を自治体に要請している」と答えるが、きちんと執行されていないから救える命も救えていない。

自治体丸投げの責任回避が医療の逼迫(ひっぱく)を生む。地域医療構想は中止すべきだ。「削減、廃止ではなく機能の再編、転換。地域医療のことは、実情を理解した地域から将来の医療体制を議論してほしい」と逃げる。大阪市では市民が議論し何度も改善を要請しても医療崩壊の実態、と迫ると、「市民から必要と要望があれば、削減対象病院であっても残すことはありうる」と弁明せざるを得なかった。自治体段階での交渉材料だ。自治体任せではない、国の責任でのコロナ対策を引き続き求めていく。

文部科学省②(大阪市デジタル授業)

なかまユニオン学校教職員支部、ZENKOは文部科学省に、新型コロナ感染者が発生した場合の、当該校・園の児童生徒、教職員全員へのPCR検査実施を強く求めた。

担当は「日々情勢が変わり次第、必要に応じ」と即答を避けた。東京都の中学校で5月に生徒の陽性判明の6日後に生徒・教職員全員のPCR検査を実施し生徒22人教職員2人が感染判明した事例を示し、文科省の「基準」を求めた。保健所の判断に委ねることでその場しのぎをしていたが、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律第57条」に“教育委員会は保健所の協力を求めること”とあり、教委が主体的に保健所に働きかけできる点をただした。「今日の意見も参考にし、感染症対策の指針を出す必要があれば出す」と確認。

また、大阪市に代表される現場の声も聴かぬままの「オンライン授業」も追及。保護者は「こどもたちに差があり、一人ひとりに応じた対応を」と求めた。ICT教育は、民間に委託せず、現場教員・子ども等の声に耳を傾けることが基本で、家庭による格差を無くす予算措置も必要だ。「ICT教育が学力向上につながる科学的根拠はあるか」に対し、「パソコンを使ったから学力が上がると、ストレートにつながるものではない」と回答せざるをえなかった。学びとは何か、教育の現場に則しさらに追及していくことが求められる。

まとめ集会

内閣府・厚生労働省・防衛省・資源エネルギー庁・原子力規制庁・財務省・文部科学省に要請を行い、午後5時半からはまとめの集会を行う。

駆けつけた福島みずほ参院議員が「行政との交渉・意見交換、こちらの思いを伝えることは次に何か化学変化を起こすと信じて継続し、政策を変えていこう」と激励。土屋のりこ足立区議は「フードパントリー利用者の声から、生活の厳しさが増していると実感。オリンピックやワクチン接種でぼろ儲けする仕組みを転換させたい」と表明した。

省庁要請初参加者からは「勉強になった」「官僚にしっかり気持ちを伝え、考えてもらう圧力をかけられた」「“官僚答弁”を初めて聞き、新鮮。言っている言葉が分からない」「防衛省は国民を守らない。あんな答弁なら僕でもできる」などの感想が出された。

要請書等、こちらからダウンロードできます。

オリンピックよりZENKOに行こう!

7月24日(土)〜25(日)にZENKOは「コロナ危機を利用した差別・分断・格差拡大を許さない!オリンピック中止! 国際連帯の力で平和で豊かな社会をつくろう! 2021 ZENKO in 大阪」を開催予定。

東京会場、オンライン配信有ります。詳しくは下記より。