全体総括
日時・場所:2021年2月10日(水)11:30~17:00 参議院議員会館会B106(地下1階)。
1.はじめに
(1)新型コロナウイルス感染症の急拡大の中で、菅政権は感染緊急事態宣言を発令した。しかし、これは感染症対策とはいえない。徹底したPCR検査拡大や休業補償を行うこともなく、感染症拡大の責任を市民に転嫁し、私権制限を強要するものである。菅政権はさらに罰則を付与する法改悪を行った。国家権力による私権制限と、感染防止効果もない罰則導入に抗議し、撤回しなければならない。
(2)今必要なことは、感染無症状者を含めた社会的検査の拡大と漏れることのない医療の提供である。公費を徹底して投入し検査・医療態勢を充実し、医療スタッフ(清掃、事務を含む)等の関係者の抜本的待遇改善などによって必要な人員を拡充・確保しなければならない。
またコロナ危機により、雇用破壊、生活破壊はさらに深刻化している。雇用調整助成金他、個人給付や賃金保障などあらゆる施策の拡充を進めなければならない。また事業者への協力金ではなく補償制度を確立しなければならない。アルバイトなどの縮小に伴う学生の学業継続に向けた施策、奨学金返済免除などの措置を講じなければならない。
(3)この間の地方自治体への要請行動によって、各自治体のコロナ対策に大きな偏差が生じていることが明らかとなった。2月10日、ZENKOは国会会期中に地域から集約した切実な要求を実現するため、中央要請行動(内閣府、厚生労働省交渉、文部科学省)に取り組んだ。またZENKOの呼びかけたコロナ緊急署名を提出した。
2.概要
(1)タイムスケジュール
11:30~内閣府、署名提出。
13:30~17:00 各省庁要請行動。
13:30~14:30 ▶厚労省①[コロナ感染対策 検査と医療の抜本的拡充]
14:30~15:30 ▶厚労省②[コロナ感染対策 医療従事者への待遇改善]
15:30~16:30 ▶厚労省③[コロナ感染状況のなか、雇用と給付について]
16:30~17:00 ▶文部科学省 内閣府(内閣官房就職氷河期世代支援推進室)[氷河期世代の奨学金]
(2)緊急署名…全国1800筆提出。
(3)参加者…61人。※コロナ対策として、現地会場は少数に抑える代表派遣とした。
[会場]9人…山川・中川・井手窪・伴・山口・山根(週刊MDS記者)/福島みずほ参議院議員・大椿(社民党常任幹事)・石川(福島議員秘書)。
[Zoom]52人…北海道/関東複数個所/関西複数個所/広島/沖縄。
(4)各省庁:計27人 [検査・医療]内閣府1・厚生労働省9/[労働・雇用]13/[奨学金]内閣府2・文科省2。
※詳細は、各担当者より報告。
3.意義・特徴(詳細別記 各担当者より)
(1)国会開催期の中、福島みずほ議員(事務所)の協力のもと各省庁から27人の出席を得て全国各所をリモートで結ぶ要請行動として取り組んだ。この間、各地域で取り組んできた全戸訪問活動で掴んだ市民の怒りと要求、介護現場等の実態から集められた要求とともに、自治体要請行動によって明らかにしてきたコロナ対策の不備と地域間偏差の実態を総集約し、各省庁に対して極めて具体的な請願要求と怒りを現場から突き付け、改善を求める行動として成功した。
福島議員からは、「以前より、(政策要求が)具体的、細かくなった」「いい意見交換になった」とのご意見を頂いた。また緊急署名1800筆(東日本:295筆/西日本:1505筆)を提出した。
(2)今回の要請行動によって、市民の命と健康、雇用と生活を破壊し続ける菅政権の姿が明らかとなった。検査拡大と医療拡大にブレーキをかけているのは政府、厚労省である。厚労省は、社会的検査の必要性を否定し、手指消毒・マスク着用など一般的感染症対策が有効とした。検査・医療拡充についても感染拡大地域限定を強調し、政府の責任を放棄し自治体に押し付けている。雇用地要請助成金や休業支援金等について、それが必要な人に届かない実態を放置し、救済ではなく打ち切りへ進もうとしている。
(3)しかし約4時間にわたる要請と追及は、大きな前進点も作りだしている。リモートで北海道から沖縄を結び、各会場の参加者から直接政府を追求する発言を届けることができた。各地方自治体への要請行動だけでは確認できなかった政府の言質を引き出すことができた。
PCR検査対象に高齢者施設だけでなく「障がい者施設、通所・訪問小規模施設も対象である」と明言させ、「どこを行政検査の対象にするのかというのは自治体の判断」との回答を得た。感染症対応の保健師の増員と体制整備の推進、ワクチン接種の本人同意原則なども確認させた。またシフト制で働く労働者への休業手当支給問題についても具体的に追及し問題点を明らかにした。
(4)中央要請行動で得た行政検査対象枠の拡大(通所・訪問小規模、障がい者施設等)や保険所職員増員などの確認点を材料とし、直ちに各自治体で継続した要請行動に取り組み〝命と健康、雇用と生活を守る具体的要求〟を一つでも多くかち取る実例を作りだす運動を強化しなければならない。
中央要請行動は、社会的な要求運動として具体化し闘うことで、自治体独自の無症状者も含めた検査の徹底拡大と必要な医療提供のための態勢整備、解雇禁止と生活保障、ワクチン強制反対を進めていく運動の方向性と展望を作りだした。政府の「自治体判断」として責任放棄をする姿勢を強く批判するとともに、各自治体への要請を繰り返し取り組み、検査の拡大、医療体制整備を迫り突破していくことが必要である。
(5)今回の要請行動は、1月中旬から担当者会議を繰り返し開催し、実施要項案、要請書案を作成してきた。ZENKOの主要な運動として取り組むことを位置付け、1月31日に開催したZENKOスタート集会で提案するなど、地域会・地域ZENKO運動の課題として取り組む形態に着手できた。
詳細な報告
検査・医療関係
1.厚労省・内閣官房出席者
- 医政局医療経営支援課
- 医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室
- 医政局医事課
- 健康局結核感染症課
- 健康局健康課保健指導室
- 健康局健康課予防接種室
- 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室
2.概要
① 厚労省側は、「(検査)『診療の手引き』に基づき医師が必要と認めた方」、「(一斉検査)地域の感染状況で自治体が判断」「(社会的検査」無症状者への検査後、陽性になるなど不透明で感染症対策としては不十分」など、発熱しても医師が必要と認めなければ検査をしない、社会的検査は否定するという従来の立場を繰り返し自治体丸投げの回答であった。9.15 指針や一連の事務連絡、そして今年の 2.4 事務連絡も、運動の力を背景に出させているが、感染拡大地域限定のものであり自治体丸投げで政府の責任放棄の隠れ蓑となっている実態が浮かび上がった。
- 厚労省「検査はクラスター等を防止し陽性者を発見していくために実施」
- 厚労省「検査は「診療の手引き」のコロナ疑い患者を活用し医師が必要認めた者に行なう」
- 厚労省「社会的検査は無症状者への検査となり、その時点で陰性であってもその後陽性になるなど不透明で感染症対策しては十分ではない。無症状者全員に対する検査より一般的な感染症対策、手指消毒やマスクの着用、大声を出さない、三密の回避などをひとり一人がとることが重要」
- 専門施設の新設は、前回は厚労省は「地方からの声を聞いていない」と逃げたが、今回は自治体(都道府県)の仕事として国の責任を明確に否定した。仮設の医療施設建設という分科会提言には答えなかった。
- 厚労省「地域医療構想は堅持」
② 6/11、11/4に続き3度目で要請項目も前回回答や事務連絡や現場の声を背景にした追及で、厚労省事務連絡の「等」の解釈など問題点を曖昧にさせず明確にさせた。
文書等には個別の明記はないが、これをテコに検査拡大やワクチン強制反対を明確に打ち出していくことが可能である。
- 厚労省事務連絡の「高齢者施設等」の記述の「等」について。「どこを行政検査の対象にするのかといのは自治体の判断。施設については限定していない」と回答。さらに「11/4の要請時には、「施設の種類には限定していないので、含まれると理解してよろしい」とお答えいただいたが、その理解でよろしいか」との追及に「そうです」と回答し、障がい者施設、通所、訪問の小規模施設も対象になることを認めさせた。
- 保健所の体制整備については、「2年間で感染症対応の保健師900人、現状の1.5倍の増員を行うなどこれを機に体制整備に務める」とも表明させた。
- 「ワクチン接種はあくまで本人の同意。希望されない方が差別を受けたり不利益を被ることのないよう周知する」と重ねて回答した。
③ 今回の要請を通じて、検査はクラスター対策で社会的検査を否定し地域医療構想を堅持し医療施設の増 設もしないなど、検査と医療拡大にブレーキをかけているのが政府厚労省という実態がより明確になった。一方、市民の運動により、厚労省は検査・医療拡大はあくまで自治体判断として、自治体が決めた場合に 一定の財政支援は明言している。よって今、対決点は自治体現場にある。広島県の社会的検査などの自治体 の先行例に続き、各地域で自治体要請を繰り返し検査拡大、医療体制整備を迫って突破していくことが必要である。
検査・医療要請担当:中川
厚労省③[コロナ感染状況のなか、雇用と給付について]は下記記事をお読みください。
文部科学省 内閣府(内閣官房就職氷河期世代支援推進室)[氷河期世代の奨学金]については後日掲載いたします。