朝鮮半島を巡る核危機が続いている。7月28日に朝鮮がICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を強行し、米本土全域が射程圏内に入ったと発表した。
トランプ米国大統領はこれに対して「世界がこれまで目にしたことのないような炎と怒りに直面することになる」と威嚇した。朝鮮人民軍も「中長距離戦略弾道ロケット火星12で、グアム周辺を炎で包み込むための作戦を慎重に検討している」と発表して対抗した。
トランプはさらに「金正恩(キム・ジョンウン)は心から、そして直ちに後悔することになる」「北朝鮮が無分別に行動した場合の軍事的解決の準備は万全で、臨戦態勢にある」と一層対立をエスカレートさせた。核戦争の危機が一気に高まったのである。
世界中から抗議が殺到する中で、8月14日に金正恩朝鮮労働党委員長が「米国の行動をもう少し見守る」と発言、8月16日にはトランプも「金正恩委員長はとても賢い、よく考えた決断を行った」と発信した。
このような対立緩和の動きも伝えられているが、予断を許さない。今回の事態は「1962年のキューバミサイル危機以来のどの時期よりも核戦争に近づいている」のであり、「トランプと金正恩は両者共に高度に予測不能」(英国・ストップ戦争連合)なのだ。
米軍はグアム島からB-1B(核兵器を搭載する大型爆撃機)を発進させ、朝鮮半島で韓国空軍と、九州周辺で航空自衛隊の戦闘機と共同訓練を実施した。8月21日からは米軍と韓国軍の数万人が参加する「ウルチフリーダムガーディアン合同軍事演習」を開始した。わずかな偶発事件でも取り返しのつかない核戦争の引き金となりかねないのである。海兵隊によるオスプレイ墜落事故や米第7艦隊の相次ぐイージス艦衝突事故などの重大事故が多発するのも太平洋沿岸域で繰り返す過重な実戦訓練の弊害の表れだ。
米国、韓国、日本政府に対して、一切の軍事演習を直ちに停止し、平和で非核の朝鮮半島に向けた外交協議を即時開始するよう強く要求する。そして、今回の朝鮮核危機を利用したグローバル資本の戦争策動を断固糾弾する。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は以前の立場を転換して、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)4台の追加の発射装置の配備を認めた。さらにトランプに対して、韓国海軍の原子力潜水艦導入への同意を求めた。韓国の有力紙の中央日報社説は「危機の韓半島…自衛的核武装を議論する時期だ」と主張している。韓国はインドネシアに潜水艦を、イラクなどに軍用機を輸出している。文在寅大統領は「朝鮮半島で再び戦争が起こることがあってはならない」(8月15日)としながら、大幅軍拡と武器輸出、核武装さえ念頭に置いた対外軍事膨張政策を進めているのである。
安倍政権は、東アジアの緊張激化を利用し戦争法発動を狙うと同時に危機をあおり支持率回復を狙っている。8月10日、小野寺防衛相はグアムへの攻撃があれば「わが国に対する存立危機事態になって(武力行使の)新3要件に合致することになれば、対応できる」、すなわち自衛隊が朝鮮に対して軍事攻撃をすると表明した。8月18日、沖縄の米軍普天間基地のオスプレイを初めて北海道での日米合同訓練に参加させ、自衛隊員が乗り込み訓練を行った。
さらに、防衛省は来年度の防衛費を史上最大の5兆2551億円にすると表明している。イージス艦への迎撃ミサイルの増強や、地上配備の迎撃ミサイル「イージス・アショア」、無人偵察機、ステルス戦闘機F35などの対外戦争用の兵器がずらりと並ぶ。そして沖縄・南西諸島の南西警備部隊の施設整備に552億円の予算を計上しようとしている。
韓国の星州(ソンジュ)へのTHAAD配備や済州(チェジュ)島海軍基地建設と安倍政権の「ミサイル迎撃」、沖縄・南西諸島の自衛隊増強は、朝鮮半島核問題を口実にした日米韓の対中国軍事対立の激化を進めると共に、東南アジア、中東、アフリカへの軍事進出を推進しようとする日韓グローバル資本の策動である。今こそ朝鮮核危機を許さない国際的な反戦運動を強め、これを口実にした戦争と改憲策動にNO!の声を突きつけ、安倍政権を打倒しよう。
2017年8月24日
平和と民主主義をめざす全国交歓会