(2016年年末記)
◎激動の12月
また沖縄に激動の12月が来た。オスプレイ墜落事故、辺野古訴訟最高裁判決、北部訓練場「返還式典」、連日の事故や出来事に怒りの炎は燃えたぎる一方だ。沖縄にとって12月は特別な月となった。
19年前の1997年12月21日、辺野古沖の海上へリポート基地建設の是非を問う名護市民投票が行われ、民意は〝基地反対〟過半数を示した。だが、当時の比嘉鉄也名護市長が官邸に呼ばれ、市長辞任とともにヘリ基地を受け入れたのは12月24日だった。
5年前の2011年12月28日午前4時半、仕事納めを迎える未明の沖縄県庁〝守衛室〟に沖縄防衛局職員十数名が辺野古新基地建設のアセスメント結果をまとめた環境影響評価書段ボール箱数十個分を運び込んで県への公文書を無理やり提出した。それは、2日前の26日、市民団体が県庁通用口で待機しアセス文書搬入を阻止したため年末ぎりぎりに追い込まれた結果だった。
仲井真弘多前沖縄県知事が辺野古新基地建設工事を認める埋め立て承認をしたのが、3年前の2013年12月27日だった。仲井真は12月に入ると、東京の病院に入院として菅義偉官房長官と埋め立て申請受け入れの算段を相談していた。埋め立て承認の報を聞きつけた市民数百人が、仕事納めの県庁1階ロビーで抗議集会を開くとともに、知事公舎前でも抗議行動が年末年始もなく取り組まれた。
1996年12月2日、日米両政府がSACO(沖縄に関する特別行動委員会)で米軍基地〝県内移設〟という再編強化に合意して20年。沖縄に平穏な12月はなかった。
◎最高裁判決に動揺なし
12月13日の墜落事故からわずか6日後の19日、稲田朋美防衛相は「機体に問題はなかった」とし、オスプレイが全面的な飛行を再開した。名護市沖の墜落現場ではまだ機体残骸の回収も終わっていないうえ、政府が公言していた「事故原因の徹底究明や再発防止策」も明らかにされないままの見切り発車。さらに飛行再開の午前中、米軍嘉手納基地で米海軍P8哨戒機が牽引車と衝突する重大事故を起こしていた。オスプレイの飛行再開を見届けてからの事故発表だった。
12月20日、最高裁での辺野古訴訟判決はわずか7秒。鬼丸かおる裁判長は「本件上告を棄却する」と読み上げ、閉廷を告げた。傍聴にかけつけた市民らが「沖縄の声を聞け」「これが最高裁なのか」と怒号がこだました。
弁論も開かず一方的に国側主張を丸呑みした最高裁判決に翌21日午後、那覇市内の福岡高裁那覇支部前で、政党、経済界、市民団体などでつくる「オール沖縄会議」は抗議集会を開催した。
共同代表の稲嶺進名護市長は「ウチナーンチュは満身創痍で流す血がないくらい、国に裏切られ司法にまで見放された。不当判決に屈せず、今日から新しい闘いに入ろう」と新基地建設の阻止に向けた団結を呼びかけた。敗訴は織り込み済み。動揺などない。諦めずに闘い続けるだけだ。700人の参加者は裁判所前の道路にまで溢れ、怒りのこぶしが突きあげられた。
◎式典拒否し抗議集会へ
12月22日、安倍政権は米軍北部訓練場の「返還式典」を強行した。市民団体は午後2時から会場の万国津梁館前で抗議のスタンディング行動。オール沖縄会議は、午後6時半から名護市21世紀の森・屋内運動場で「欠陥機オスプレイ撤去を求める緊急抗議集会」を開催し、4200人が参加した。
返還式典を欠席した翁長雄志沖縄県知事が現れ演壇に立つと、2年前の知事選時のような大きな歓声に包まれた。「(米軍を)良き隣人と言うわけにはいかない」「政府が式典を強行したのは県民に寄り添う姿勢が全く見えず、沖縄県は出席を取りやめた」と知事が政府の姿勢を批判する度に拍手と歓声がなりやまない。最後にウチナーグチで「新辺野古基地を造らさなければオスプレイも配備撤去できる。必ず造らないよう頑張ろう」と締めくくると、参加者の心はひとつになり会場全体が震えるほど拍手と歓声がとどろいた。
◎内外から圧倒的支援を
最高裁判決で敗訴をうけても辺野古新基地建設は知事権限を使い阻止すると表明した翁長知事に対し、政府はその権限を無力化するための対抗手段の検討を始めた。建設工事の変更のたびに求められる設計概要変更申請については、今後県に申請しないという信じられない方針も模索している。来年3月に迎える岩礁破砕許可については、那覇空港第2滑走路工事での更新許可を前例として示し、辺野古を認めなければダブルスタンダード(二重基準)の知事権限乱用との主張を展開するもくろみだ。それでも県が政府に屈しなければ、辺野古新基地建設工事の遅延を理由にした損害賠償請求や強制代執行も視野に入れる。行政法の慣例や判例をも全く無視した違法覚悟の強硬策だ。
しかし、翁長知事を先頭に県民の思いは揺るがない。これまで以上に国内外から日米両政府を追い詰める圧倒的な支援が必要だ。2017年、辺野古新基地阻止の闘いは、海上工事再開との対決もあわせて正念場を迎える。(西岡)